Reservation空室検索・予約
航空券付きプラン
提携法人専用予約
2025.01.05
日本では、くじらをハレの肉として取り扱う地域がいくつかあり、道南もその一つ。函館近郊の方々にとって、お正月に外せないお料理といえばくじら汁です。くじら汁とは、くじらの皮付きの脂身を塩漬けにした塩くじらとたっぷりの根菜、春に塩漬けにした山菜などで作られる汁物。お正月三が日にくじら汁が食卓に並ぶご家庭は、今でも多く見られます。
1921(大正10)年に建てられた、ひさしが印象的な和洋折衷の建物
2023年11月にオープンした「函館 さくら家」は、そんなくじら汁を通年提供しているお店です。温かくも懐かしい雰囲気が漂う店内で、店主 赤塚泉(あかつか・いずみ)さんにくじら汁の魅力を伺いました。
外観と同様、和洋折衷のエッセンスが感じられる店内
赤塚さんは軽井沢のご出身で、さまざまなご縁があり函館に移住。当時、会社の方からいただいたくじら汁に衝撃を受けたと言います。「このくじらの出汁の風味とお野菜の旨みが溶け出した汁の味はこれまで食べたことがありませんでした。くじらの赤身を使った料理は数々ありましたが、脂身をこのような形でいただくのを見たのは初めてでした。」と話す赤塚さん。
くじらは餌となるニシンを追いかけてやってくることから、漁業の街・函館ではかつて、大漁を予感させるおめでたい象徴として扱われていたそう。そのお肉と、冬の北海道にとっては貴重な山菜を加えたくじら汁は、まさにご馳走そのもの。このおめでたくも美味しいくじら汁をもっと多くの方に知ってほしいという思いから、赤塚さんは観光客の方が集まる元町で販売していくことを決めました。
透んだ出汁に様々な具材が見える、塩味のくじら汁
くじら汁の味は塩、醤油、味噌の3種類があり、具材は塩くじらのほか、ふき、わらび、笹たけのこ、大根、にんじん。塩くじらはちょうど良い出汁になる程度しか入れていないそうですが、昆布や鰹とは違う風味に驚きます。くじらの風味は独特で、豚や鶏とはまた違う味わい。湯通しして塩やアクを取ることで、雑味や余分な油分が取り除かれ、美しく澄んだ出汁に仕立てることができます。
くじら汁を初めていただく方は、塩味がおすすめ。「塩味のくじら汁は、調味料の風味としては最も少ない最低限の味付けになるので、くじらの出汁をより感じることができます。お野菜だけ見るとシンプルなのに、くじらの出汁が加わるだけでこんなに複雑で旨みが溢れる汁物になるんですから、驚きですよね。」と、赤塚さんは話します。塩味は汁の色も澄んでいるので、具材の色も映えるため、見た目にも楽しむことができます。
くじら汁のセットメニューのお供におすすめされたお赤飯は、もち米に食紅と甘納豆を加えて炊き上げた、ほんのりと甘く、ちょっぴりスイーツ感もある一品。北海道全土で食べられる特有の調理法として、テレビなどで見たことのある方も多いのではないでしょうか。「甘納豆に接しているお米の部分は特に甘くて、くじら汁の塩気との塩梅が好きなんです。」とお茶目に笑う赤塚さん。くじら汁とお赤飯を交互にいただけば、函館のハレの味を飽きることなく堪能することができます。
今では地元の方もお店へよく訪れるそう。「最初、くじら汁は塩味だけを用意していたんですが、『うちは醤油味だったよ』『味噌味はないの?』という地元の方々のお声を聞いていたら、三味全てコンプリートしてしまいましたね。」と、赤塚さんは教えてくれました。
具材、味付け、提供の仕方もそのご家庭ごとに少しずつ違っているのがくじら汁の面白いところ。その土地ならではの家庭の食文化と伝統を知るのも、楽しい旅のひとときになりそうです。
函館さくら家
住所:北海道函館市元町14−6
電話:0138-22-9213
アクセス:函館市電「末広町」徒歩5分
SNS:https://x.com/HKD_sakuraya146
SNS: https://www.instagram.com/hakosakura1110/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください