空室検索・予約公式サイトが最安値

Reservation

予約確認・変更・取消はこちら

提携法人専用予約

2025.07.20

時を越えて愛される珈琲。大阪最古級の喫茶店で味わう100年の物語

NEIGHBORS

時を越えて愛される珈琲。大阪最古級の喫茶店で味わう100年の物語

大阪は、古くから“喫茶店文化”が根付く街です。その歴史は戦前にまで遡り、人々が集い語らう場所として愛されてきました。事実、喫茶店の数は長年全国で最も多いとされており、その一つひとつが街の景色に溶け込み、時代と共に変わりゆく大阪の暮らしを映し出しています。

そんな大阪の喫茶文化を語るうえで欠かせない存在が、ホテルリソルトリ二ティ大阪より徒歩10分の場所にある、「平岡珈琲店」。

関西で現存する最古級の喫茶店として100年以上の歴史を持ち、創業当時から変わらぬ“ ボイリング法” で珈琲を淹れ続けています。店の扉を開けば、そこには大正時代の趣を感じさせるレトロな空間が広がります。

醤油蔵から、未知なる珈琲の世界へ

「平岡珈琲店」初代店主、小川忠次郎さん(右上)

「平岡珈琲店」初代店主、小川忠次郎さん(右上)

「平岡珈琲店」の物語は、一人の青年から始まります。創業者の小川 忠次郎(おがわ ちゅうじろう)さんは、千葉県木更津市の醤油づくりを家業とする家に生まれ、将来はその伝統を受け継ぐ立場にありました。しかし、時代の変化の中で醤油の需要は減少し、家業の先行きに不安を抱くように。

そんな折に偶然出会ったのが、銀座「カフェーパウリスタ」で飲んだ一杯の珈琲でした。 口にした瞬間、その香りと深い味わいに衝撃を受け「これからは珈琲の時代が来る。」と確信。家業を離れ、結婚を機に関西に移り、未知なる珈琲の世界に挑戦したと言います。

2人の息子と「平岡珈琲店」店内で過ごす忠次郎さん

2人の息子と「平岡珈琲店」店内で過ごす忠次郎さん

1921(大正10)年、忠次郎さんは大阪に「平岡珈琲店」を創業。当時の大阪ではまだ“喫茶店”という業態が一般的ではありませんでしたが、忠次郎さんは醤油づくりで培った手仕事の精神を活かし、珈琲を一杯一杯丁寧に淹れ続けました。

1935(昭和10)年、2度目の移転時に営んでいた店舗の外観

1935(昭和10)年、2度目の移転時に営んでいた店舗の外観

やがて、「平岡珈琲店」は大阪のビジネスマンたちにとって憩いの場となり、街に根付いていったのです。大正、昭和、平成、令和と続く長い歴史の中で、親子3代にわたりその味と伝統は今日に受け継がれています。

代々受け継がれる“ボイリング法”

初代が使用していた天秤はかりと手動ミル 

初代が使用していた天秤はかりと手動ミル 

創業時からの調度品が飾られた店内には、歴代店主たちの想いが積み重なった空気が漂います。それはまるで、この場に身を置くだけで、大正から令和まで続く時間の流れを肌で感じることができるかのよう。

そんな「平岡珈琲店」最大の特徴は、創業当時から変わらない”ボイリング法”で淹れる珈琲です。

ボイリング法とは粗挽きの豆を、初代から受け継いだ100年物の鍋でじっくり煮出し、太い糸で平織りされた天竺木綿(てんじくもめん)で丁寧にろ過する方法。この綿布は目が細かく、雑味を抑えながらも豆本来の甘みと香りを際立たせる役割を担っているそう。煮出すことでまろやかなコクが生まれ、柔らかな口当たりとやさしい余韻が広がる一杯に仕上がります。

100年の歴史をつないでいく現店主の想い

現在、店を切り盛りするのは3代目の小川 流水(おがわ りゅうすい)さん。小川さんは、「品質のよい珈琲を提供すること」を何よりも大切にしています。

「100年続けてきたことにこだわりすぎると意固地になって、時代に取り残されてしまう。だから、“何を大切にしたいか”は変えずに、柔軟に“How”を変えながら歴史をつないでいきたいんです。」

定番メニューの「百年珈琲」と「自家製ドーナツ」

定番メニューの「百年珈琲」と「自家製ドーナツ」

代替わりの際には、これまでのやり方をなかなか変えられない葛藤もあったそう。それでも、定番メニューを“切れ味のよさ”を基調とした味から、口に含んだ瞬間にすっと溶けて消えるような風味へ変更するなど、少しずつ時代に合ったスタイルを模索してきました。

かつては銀行や保険会社に勤めるビジネスマンたちが客層の中心でしたが、IT企業の進出やコロナ禍を経て、現在は観光客の姿も多く見られるように。時代とともに変わりゆくお客様に応えながらも、「平岡珈琲店」らしさを守り続けています。

これまでの歴史を守り、形を変え育てていく 

「カフェという形にこだわる必要はないと思っています。先代が目指した『珈琲を日本の食卓に届けたい』という想いさえ守ることができれば、形は変わってもいい。珈琲のある幸せな時間を、もっと多くの人に届けたいんです。」

100年の歴史をただ守るのではなく、時代に合わせて柔軟に育てていく。「平岡珈琲店」は、変わらない想いと挑戦を重ねながら、これからも大阪の街角で温かな時間を紡ぎ続けることでしょう。


平岡珈琲店 
電話: 090-6244-3708
住所:大阪府大阪市中央区瓦町3丁目6-11
アクセス: Osaka Metro 御堂筋線 本町駅 1番出口から徒歩3分
HP  :https://www.cafe-hiraoka.jp/
SNS:https://www.instagram.com/cafe_hiraoka/
*営業時間や定休日についての詳細は、上記のリンク先にてご確認ください。